ANH-00

「ANH-00」は、設置された環境の音を集音し、環境の周波数帯域の空きが自然と埋まるような新たな音を自律的に生成、可聴域を超えた音も含む多様な音を複数のスピーカーから複雑なタイミングで出力する装置である。自然音を録音し再生するだけのシステムでは実現しえない、その場の音環境に適応した自然環境のような豊かなサウンドスケープをリアルタイムに生み出す。
各エージェントには音声発生器官としてシンプルなFMシンセサイザーが搭載されている。このシンセサイザーのパラメーターが遺伝的アルゴリズムによって、エージェント同士が音によるコミュケーションを獲得出来るように進化し音のニッチの棲み分けが自然と生じる。発話タイミングや発話パターンはダイナミクスエンジン「ALIFE Engine®」を使用している。複数のALifeエージェント同士のコミュケーションと音環境との相互作用が作り出す現象が、このシステムが作り出すサウンドスケープの構成要素となる。

「ANH-00」は、都市空間における新たな音環境のあり方を提示するとともに、生命の生きようとする純粋な行為の集合が美しい音を作り出す、生態系を楽器と捉えた作品とも言える。

本作品は2019年12月に東京行われた電子音楽 × デジタルアートの祭典『MUTEK Japan』で初公開された。

 

ジャングルのような豊かな自然環境では、多種多様な生物がコミュニケーションのために鳴き声を発している。音楽家、音響生態学者のバーニクラウスは、多種多様な生物が各々複雑な鳴き声を発しているにも関わらず各種のコミュニケーションに問題が生じないのは、それぞれの生物が他の生物と異なった周波数/時間帯で声を発するためではないかと考えた。この仮説を「音のニッチ仮説(The Acoustic Niche Hypothesis)」と呼ぶ。ニッチとは、ある生物種が生息する環境で環境要因や生活資源の棲み分けが行われる生物学の概念を指す。つまり、野生生物は、発音・発声によるコミュニケーションを効率よく行うために進化した結果、ある地域の環境や時間帯における音のニッチの棲み分けが生じていると考えられる。

多種多様な生物種が存在しない都市部においては、自然界が作り出す人間の可聴域上限を超える音を含めた音の周波数帯域が大幅に欠落しており、元来自然で暮らしていた人類に生理的・心理的に影響を与えているとも言われている。

 

Direction: 青木竜太
Software Architecture Design: 升森敦士、土井樹
Hardware Architecture Design/Development: ジョン・スミス
本試作機は、一般社団法人ALIFE Lab.と株式会社電通国際情報サービス(ISID)のALife研究の社会応用に向けた共同研究プロジェクト「集団の形成メカニズムの分析と介入法の実証する」の一環として開発しています。