本作品は,ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)と9.1チャンネルの立体音響システムを用いて,現実には存在しない世界を無響室内に生み出すインスタレーションです.鑑賞者は,現実空間からシームレスに,仮想空間の超現実的な異空間を体験します.
本作のタイトルは,1986年に出版された,哲学者トーマス・ネーゲル(Thomas NAGEL)による著書『どこでもないところからの眺め』のタイトルから引用されています.行為の主体性と客観性を止揚する「どこでもないところからの眺め」を体験者がいかにして獲得することが可能かを,VRと生成される音響環境によって試みます.本作は,体験者自身がこれまでの人生で培ってきた知覚と運動の関係性,これまでの経験(あるいは未来の予測)から生まれる記憶と「今」の関係性,の双方にズレを生じさせることで,一人称でも三人称でもない世界の見方,その視点へと近づくための装置です.
作品中で聴こえる音と音の運動は,その大半がリアルタイムに生成されています.たとえば,体験者が見ている風景そのものが音に変換されたり,VR空間の目に見えないボイド(たくさんの群れの複雑な動きをシミュレーションしたもの)の飛行にともなって波のような音が生成されているなど,体験ごとに異なる生きた環境としての仮想空間が作られています
Date | Title | Exhibition | Place |
2022-06 | The View from Nowhere | ICCアニュアル2022 生命的なものたち | NTTインターコミュニケーション・センター |
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